「日本の法律では、従業員を解雇できない」とよく聞きます。それは正しくはありません。
確かにハードルは高いですが、きちんとルールを守れば、問題ある従業員を解雇することは可能です。
トラブルになりやすい解雇のルールと手続きを確認しましょう。
労働者からの申し出によって労働契約を終了することを退職といいます。
あらかじめ契約期間が定められていない場合は、少なくとも2週間前までに退職の申し出をすれば、法律上(民法627条)はいつでも退職することができます。なお、この予告期間は任意法規と解するのが一般的です。労働契約や就業規則で民法と異なる定めをした場合、延長することも可能です。
ただし、労働者の退職の自由が極度に制限されるような長さを定めることはできません(1か月程度)。
あらかじめ期間の定めがある(有期労働契約)場合は、契約期間の満了前に退職することは契約違反となり、やむを得ない事由がない限りは、契約期間の途中で退職することはできません。契約違反により会社に損害が生じた場合には、損害賠償を請求することも可能です。
解雇とは、使用者からの申し出により一方的に労働契約を終了することをいいます。
下記の場合は、労働基準法やその他の法令で、解雇が禁止されています。
・業務上の傷病による休業期間及びその後30日間
・産前産後休業期間及びその後30日間
・国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇
・労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇
・労働組合の組合員であること等を理由とする解雇
・女性(男性)であること、婚姻、出産、産前産後休業等を理由とする解雇
・育児・介護休業の申し出をしたこと、取得したことを理由とする解雇
・パートタイム労働者であることを理由とする解雇
・公益通報をしたことを理由とする解雇
また、これらに該当しない場合でも、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、無効となります。(解雇権濫用の法理)
使用者が、不況や経営不振などの理由により解雇せざるを得ない場合に、人員削減のために行う解雇を整理解雇といいます。これも他の解雇と同様に、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、無効となります。
整理解雇を行う場合は、これまでの判例から、余剰人員となっただけでは解雇することはできず、労働組合との協議や労働者への説明を行うとともに、以下のこと(整理解雇の4要件)を慎重に検討する必要があります。
①人員削減の必要性
②解雇回避努力を尽くしたか
③解雇対象者の人選基準とその適用の合理性
④労働者側との協議などの手続の妥当性
退職勧奨とは、使用者が労働者に対し、退職を勧めることをいいます。これは労働者の意思とは関係なく使用者が一方的に契約の解除を通告する解雇とは異なり、退職勧奨に応じるかは労働者の自由です。
そのため、上記で説明した整理解雇の4要件を満たす必要はありませんが、社会的相当性を逸脱した様態での半強制的ないし執拗な退職勧奨は不法行為を形成し、損害賠償責任が生じる可能性があります。また、労働者の真意に反して辞表を提出させた場合は、退職の意思表示そのものが無効となる可能性があります
解雇を行うときには、解雇しようとする労働者に対し、30日前までに解雇の予告をする必要があります。また、労働者から求められた場合には、解雇理由を記載した書面を作成して本人に渡さなければなりません。
一方、予告を行わずに解雇する場合は、最低30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。
平均賃金は、原則として、次の(A)(B)を比較して、高い方となります。
(A) 過去3か月間の賃金の合計を過去3か月間の暦日数で割った額
(B) 過去3か月間の賃金の合計を過去3か月間の労働日数で割った額の60%
解雇予告をしないで即時に解雇しようとする場合には、解雇と同時に支払うことが必要です。
解雇予告と解雇予告手当を併用する場合は、遅くとも解雇の日までに支払うことが必要です。
「労働者の責に帰すべき事由による解雇」や「天災事変等により事業の継続が不可能となった場合」には、所轄労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)を受けることで、解雇予告手当の支払いが免責されます。
ただし、社内で懲戒解雇となっても、懲戒解雇が有効か否かは、最終的には裁判所が判断するため、解雇予告除外認定が受けられない場合もあります。
また、下記の場合は、解雇予告そのものが適用されません。ただし、右の日数を超えて引き続き働くことになった場合は、解雇予告の対象となります。
・試用期間中の者・・・14日
・4か月以内の季節労働者・・・その契約期間
・契約期間が2か月以内の者・・・その契約期間
・日雇労働者・・・1か月
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